2010年05月26日(水) .... ヘッジファンド・コンファレンスに参加、懸念材料山積み状態だけど…。
● 一昨日、昨日と、都内で開催された某ヘッジファンド・コンファレンスに参加してきました。この手のコンファレンスで重要なのは、プレゼンテーションやパネルディスカッションやらに加えて、英語でいう「Networking」というもの。日本語で言えば「人脈形成」とか「親睦を深める」という意味での、顔合わせというか出会いの場所ですね(^^;。この業界は取引所取引の商品と違って、どこかに参加者が集う場所が決まっているのではありません。人と人とのつながりが、ビジネス関係の第一歩となる世界なので、人脈は本当に重要。コンファレンスとは言いながら、プレゼン等の間のコーヒーブレークにしても、30分程度は用意されているのが当然です。なぜかと言えば、そこでの立ち話が何よりも重要な人脈形成になるんです(^^。
● それはさておき、日本で開催されるこの手のヘッジファンド・コンファレンスも、振り返ってみれば、ピークは多分、2005年とか2006年頃だったと思います。誰もが今でも語りつぐ「ライブドア事件」を挟んだ時期ですね(^^;。それ以降、日本株関連のヘッジファンドは多くが苦境に陥ったことに加え、中国株を始めとする新興国にグローバルな投資家の興味が向かってしまったのです。そして、2007年8月のバリュー崩壊相場、さらに2008年9月のリーマン・ショックと、まぁ、「これでもかぁ!」というほど色々な事件が発生し、日本関連は一気に冷え込んだというのが実情です。
● ここ1年も、特に日本にある外資系証券関連で聞こえてくる話は、首切りだの、東京から香港に部署をそっくり移しただの、その手の話ばかり(^^;。そして、久しぶりにヘッジファンド・コンファレンスに参加する機会を得たものの、「そんなに日本に対して急に興味が戻ったとは思えないけど…」って、ちょっと不思議な気分でした。
● 参加してみての印象は、「もっと酷いかと思ってたけど、意外に盛り上がっているやん!」って感じ(^^。閑古鳥が鳴いているのかと心配していたものの、それなりに参加者が居たし、日本人:外国人比率は7:3程度。意外に外国人の参加が多かった印象でした。もっと酷いかと心配していたんですけどね…(^^;。ただ、こういったコンファレンスをスポンサーする企業はかなり減ったらしく、他の参加者の方々に話を聞くと、企業ロゴの登場は数年前の半分以下とのことでした(^^;。
● 一方、プレゼンやパネルディスカッションにも興味深いものがあり、実際の現場で運用しているマネージャー連中や、逆にヘッジファンドを深く調査する「ファンド・オブ・ヘッジ・ファンズ(FoHFs)」の連中、さらに年金基金の方々など、色々な声が聞けたので、ホンのその一部分を抜粋して書いておきましょう。
● なお、あらかじめ書いておきますが、これらは一人の発言ではなく、色々なプレゼンやディスカッションのなかで私が印象的に感じた部分を抜き出してあります。主に日本株関係についてです。また、多くが英語での発言だったので、私が適当に和訳しています。さらに、何らか弊害が発生することは避けたいので、発言者等の固有名詞は敢えて書きません。為念。
- 日本株への注目度は以前と比較すると随分良くなった。割安感もそれなりに出てきているし、他国の市場と比較すると、色々な意味で安定感がある。単純に日本株を好むということはないにしろ、世界的な混乱のなかでは、レラティブに見て日本株の印象は良い。
- 先進各国の株式市場で共通して見られるのは、企業利益は増加しているものの、レベニュー(売上)が減少していること。これは、成長がトップ企業に偏る可能性を示唆している
- 過去数週間の世界中の市場は、リクイデーション・ドリブンで動いている。そのため、理論的に筋道が通らない値動きがあちこちで見受けられる。
- リーマン・ショック後の特徴の一つとして、何かあったときにエクスポージャーやリスクを落とす動きがすぐに出てくる。一つはリスク管理の観点だが、投資家がHFの流動性を強く求めている面も大きい。
- 政府の対応に疑問が残る状態が長引きそうで、ボラティリティーは高めで推移すると予想している。突然の政策変更でマーケットが大きく動かされる事態はこれからも続くだろうし、運用者も投資家もそれに備えておく必要がある。
- ディストレス投資に注目。今後、経済状況が回復するなかでも、かなりの企業破綻の発生も同時に起こる可能性がある。それだけに単なるバリュー投資よりも、ディストレス投資により魅力を感じる。
- デビデンド・スワップの価格推移を見ると、これまで増配基調を期待していたマーケットが、一気に減配へと心理が変化している。これは、中期的な業績の頭打ち、さらに中期的な下げ相場を予見している可能性がある。
- LIBORの上昇は、相場にとって高血圧が悪化しているようなもので、健康被害は非常に大きくなる。当然、HFは非常に苦しくなり、流動性の枯渇が一層のリクイデーションを誘発している。リーマン・ブラザーズ崩壊の前に似ているのが、非常に気掛かりだ。
- この2週間というもの、日本株のLSファンドは非常に厳しい状況に陥っている。大きなロングの解約があって、それがLSファンドの解約やポジション縮小を誘発している。
- リスク縮減がHFの最大のテーマになる光景は、 2007年、2008年に見たのと似ている。逆に言えば、その後の相場でチャンスが訪れるハズだが…。
- iTraxxの直近での上昇はかなり異常な状態。不思議なのは、現物社債にそれほど極端な動きがないこと。敢えて理解するのであれば、トップライン企業のファンダメンタルズはしっかりしているという意味だろうが…。
- 相場には4段階あると考えている。急落後から順番に、回復、楽観、疑念、そして失望とステージが循環する。現在は疑念の段階に来ていると考えており、今後の展開次第で大きな収益機会もあるだろう。
● 他にもHF規制の問題についてや、HFと投資家との関係、デューデリの話など色々あったのですが、ここでは主にマーケット関係に絞っておきました。なお、蛇足かもしれませんけど、「収益機会がある」というのは、あくまでもHFを運用する、もしくはHFに投資する立場からの見方です。ロングオンリーとは全く視点が異なっているので、為念(^^;。
● ヘッジファンドが全て正しいなんて寝惚けた考えは無いのですけど、ある一つの大きな投資主体の見方として聞くのは、頭がとてもリフレッシュできました。
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