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このマーケットコメントは、資産運用を職業とする国内外の機関投資家顧客向けに書いている落書き帳です。少し違った視点から相場を眺めている一人の声としてお楽しみ下さい!

● 3月19日までの予定で進められていた三菱ケミカルホールディングス(4188)による三菱レイヨン(3404)に対する公開買付け(TOB)が終了。3月19日、20日に両社から結果が発表されています。どちらの会社のHPにもリリースが掲載されていますが、両社分のリリースが載っていて見易いと思えるのが三菱レイヨンのリリースなので、そちらをご紹介しておきます。『株式会社三菱ケミカルホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果ならびに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ』です。何はともあれ、こちらをご確認ください。

● 要点とすれば、(1)三菱レイヨンの議決権数の 78.19%の買い付けが成立した、(2)今後、三菱ケミHDの株式との株式交換を実施して完全子会社化を目指す、(3)株式交換後は取引所規定に基づいて上場廃止となる、ってところです。(2)と(3)は既に発表されている方針通りで、変更はありません。

● なんで、このTOBを気にするかと言えば、私個人にとっては、ただ一点のみ(^^;。三菱レイヨンが日経平均採用銘柄で、上場廃止となった暁には、日経平均に新規に追加補充される銘柄が出てくるからです。実は、少し前にこのブログ上で、「日経平均銘柄入替え、今日の日新製鋼/日本電気硝子の値動きと今後」と書きました。ただ、ここには不正確な部分も含まれていたので(打ち消しラインを入れてあります)、その部分の訂正と今後の展開について「推理」してみたいと考えています。

● まず、TOBの結果を受けて上場廃止が決まったかと言えば、実は決まっていません。前回のアップで「75%の浮動株比率」云々と書いた部分は間違いでした。というか、古い基準だったのです。現在の流通株式比率に関する基準は、「5%未満」で上場廃止基準となってしまいます(東証HP、上場廃止基準(一部・二部))。「そう言われてみれば…」って感じです(^^;。変更があったのは、言われて思い出したってのが正直なところで、完全に抜け落ちていました。ホント、「そう言われてみれば…」だったのです。すみません。

● 今回発表されたTOBの結果により、議決権の 78.19%が固定されたことになるので、単純計算で残りは 21.81%。東証HP内に「流通株式数等(分布状況)基準」の定義があるのですが、「上場株式数の10%以上を所有する者」というのが一つの鍵になります。ただ、TOB前の三菱レイヨンの大株主リストを見ても、最大が日本マスタートラスト信託口の4.7%。つまり、その時点で10%以上を保有する投資家は居なかったし、TOB後に三菱ケミHD以外に、10%以上を保有する投資家が出たと考えるのも不自然なので、この可能性は排除して差し支えないと考えます。つまり、株式交換が終わるまでは、「5%未満」の上場廃止基準に抵触することはなさそうです。

● 指数銘柄入替えの観点からは、上場廃止でなくて二部降格(正確には"指定替え")でも該当するのですが、二部降格には浮動株比率の基準はなく、時価総額やら株主数とかの基準はあるものの、TOB後の三菱レイヨンでも、これらで該当するのはなさそうな雰囲気です。パッとみて分からなかったのが株主数だったのですが、リリースによると、昨年9月末時点の総株主の議決権の数は568,504個あり、その内、447,434個が今回のTOBで異動。残りは121,070個ってことになります。この議決権が何名の株主に保有されているかが問題ですが、「2,000人」未満だと二部降格基準該当になります。ただ、該当するとしても、猶予期間が1年あるので、すぐに二部降格となって指数から外れる、というシナリオの可能性はほぼゼロだと考えられます。

● つまり、上場廃止に向けては、「流通株式数等(分布状況)基準」で「5%未満」というのが鍵になります。東証HP内の記述を見ると、これは『「株式の分布状況表」及び「有価証券報告書」をもって審査を行います』と明記されています。さらに、『審査は各事業年度の末日の状況について行います』とも明記されています(東証HP「流通株式数等(分布状況)基準」)。有価証券報告書も株式の分布状況表も、事業年度の末日の状況について会社が報告するものです。つまり、3月末の状況を東証に報告する正式な書類をもって、東証が上場廃止の決定を下す可能性が大きいってことです。時期的には、大体ですが、5月~6月に掛けてになりそうですね(昨年は6月29日に決算公告、6月30日に三菱レイヨンのHPで有価証券報告書が公開されている)。

● ただ、今回のTOBだけでは流通株式比率は「5%未満」には達していません。計算上、まだ 21.81%もあるのです(^^;。株式交換が実施されるにしても、3月末を過ぎてからの話になるでしょうから、今年の有価証券報告書には間に合いそうにありません。東証が上場廃止を決定しないと(整理ポスト入りしないと)、日本経済新聞社は日経平均の銘柄入替えを出来ません。そのため、色々考えると、株式交換が成立して、その後、臨時で有価証券報告書/株式の分布状況表の提出があるかどうかですね。もし期末ではない臨時提出がないとなると、三菱レイヨンに関する日経平均の銘柄入替えは、丸々1年以上先ってことになってしまいます。

● それはそれで実はちょっとした問題があり、その期間中、かなり流通株式数が少ない状態で日経平均採用銘柄として存在し続けることになってしまいます。現在でも流通しているのは発行済み株式数の2割程度。この先、株式交換が完了すると、実質的には流通株式が無くなってしまうんです(^^;。これはさすがにマズイでしょうから、この辺の時期に何らかの動きがあると予想しています。

● 東証HP内に文章としては書かれていないのですが、画像部分に「分布状況表提出は任意(中間期)」との記述があります。つまり、可能性として考えておくとすると、株式交換が夏頃に実施され、その結果としての「分布状況表提出」が中間期(もしくは任意の日付)で実施され、東証はそれに基づいて上場廃止を決定する、というシナリオです。まぁ、これはあくまでも私の想像ですが…(^^;。いずれにしろ、現時点で考えられることは、まず、株式交換が実施されるところまで待つ、ってことでしょうか…。何か追加の話があれば、また書きます。

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