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このマーケットコメントは、資産運用を職業とする国内外の機関投資家顧客向けに書いている落書き帳です。少し違った視点から相場を眺めている一人の声としてお楽しみ下さい!

● せっかくの祝日ですが、今日は妙に肌寒いこともあって巣ごもり(^^;。そこで、JAL(9205)の件について少し書いておきましょう。ただ、世間一般で出ている「株券紙くず化」等々の話については、日経その他の報道をご覧頂くとして(^^;、ここでは指数絡みの話に集中して行きます。

● まずイベント予定の把握。休み明けの1月12日には、JALのOBに対する「企業年金減額に関する意向確認」の投票期限を迎えます。とは言うものの、色々な報道などを見ていると、現段階ではこの結果がどうあれ、JALが法的整理に入ることは間違いなさそうです。JALの株主にとって、現時点でJAL株を売ったほうが良いかどうかは、まぁ何て言うか、墜落しつつある飛行機の中で旅行者傷害保険の申込み用紙を記入しているようなもので、時、既に遅し。一方で、指数ヲタクにとって気になるのは、JALの上場が維持されるかどうかの点です。

● というワケで本題。ご存知の通り、JALは日経平均採用銘柄です。ところが、JALが破綻となって上場廃止が決まれば、日経平均の「臨時銘柄入替え」が発生することになります。日経平均の銘柄入替え等々のルールは、「日経平均プロフィル」というオフィシャルサイトに詳細に出ていますが、そのなかで今回注目すべきは、「銘柄選定ルール」のところ(2ページあります)。上の方は年1回実施される(例年10月に実施)「定期見直し」に関連する話が中心ですが、今回のJALの場合は、下の方に記載してある「(5)臨時入れ替え」に該当。つまり、「採用銘柄の被合併や経営破たんよる上場廃止が発生した場合」と明記してあるケースに該当する(かもしれない)ってことになります。

● ここでは、JALが法的整理に伴って100%減資を実施し、上場廃止になると想定して書いていきましょう。銘柄入替えについて考察する際に、押さえておくべきポイントがいくつかあります。いずれも、日経平均プロフィルに明記してあることですが、特に以下は重要。

  • 除外は整理ポスト入りと同時に行う
  • 破たん銘柄の整理ポスト入り後、2日間程度の周知期間を置いた上で補充
  • 経営破たんよる上場廃止が発生した場合、「高流動性銘柄群」に含まれる銘柄の中から、当該除外銘柄と同一セクターに属する銘柄のうち、市場流動性順位が高い未採用の銘柄を補充することを原則
  • ただし、細かい例外規定もあり

● このルールから想像すると、JALの上場廃止が決まった時点でJALは整理ポストに割り当てられることになるので、その時点で日経平均から除外されることになります。いまさら後生大事にJAL株を抱えているファンドは多くはないと想像するのですが、それでもピュアな指数連動ファンドからは売りが出るでしょうネ。まぁ、これはそれほど大した話ではありません(空売り出来る訳ではないので)。そして、その日の大引後にでも、日経から新規採用銘柄(補充銘柄)が発表されることになるハズです。そこから2日間程度経過したあとで、めでたく日経平均に採用、という手順になります。これまでの経験からすると、大引後の発表は午後4時半です。もちろん、私がこう書けば日経が気まぐれを起こすかもしれませんが…(^^;。

● 一方、補充銘柄については、JALと同一セクターに属する銘柄ってことになっています。日経のセクター分類定義はこちらの中段付近に明記されていますが、JALは「運輸・公共」セクターに所属。これは、日経36業種に言い換えると「鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス」ってこと。この中で、日経平均に採用されていない銘柄で流動性ランクが上となると、まぁ、ドタ勘で想像したとしても、大体が同じような結果になると思います。敢えて伏字にするほどのことはないと思うので書いちゃいますが、JR東海(東海旅客鉄道、9022)が筆頭候補ですね(^^;。これまでも定期銘柄入替えの際に候補銘柄として何度も名前が出ているので、全くサプライズではないし、「運輸・公共」セクターとしては妥当なチョイスでしょうか。

● JR東海はかなり大きな銘柄なので、(1) JALの上場廃止が決まった、(2) 補充銘柄がJR東海と決まった、と2連発で予想を当てたとしても、どの程度の株価インパクトがあるかは不透明。市場関係者の間では、JALの経営不安が現実味を帯びて囁かれはじめた頃(もうかれこれ半年以上も前の話)から、日経平均の臨時銘柄入替えについては、頭にあったはず。当時は先回りする確信があったのではないにしろ、12月にJALが100円を割り込んで急落した時点では、相当数の市場関係者が意識したと想像します。その時点で、JR東海という名前は、かなりの方々の頭に浮かんでいたでしょうから…(^^;。

● なお、もしJALの減資が100%ではなくて上場維持となれば、現時点での臨時銘柄入替えは発生せず、上記の話は「無かったこと」になります(^^;。現在、話として出ているのは、「施行規則で定める再建計画の開示を行った場合には、当該再建計画を開示した日の翌日から起算して1か月間の時価総額が10億円以上」というのが条件になります。これは東証の有価証券上場規程第601条(7)に明記されています。もし興味のある方は、東証HPにPDFファイルがアップされていますので、ご参照ください(このPDFファイルの39ページ目)。この場合、何%の減資ならこの条件を満たせるかってことが焦点になります。

● ちなみにJALの株価は休み明けに急落(率で言えばの話)すると予想されるのですが、JAL株だけを考えれば、日経平均への直接的な影響は非常に限定的です。JALの金曜日終値は67円ですが、この価格帯での制限値幅は30円。ストップ安するとしても前日比では30円下落するだけ。日経平均は基本が単純平均株価なので、構成銘柄の一つが30円安したとしても、全体からすれば、ホンの微々たるもの。むしろ、ファーストリテイリング(9983)がチョロッと動いた方が、はるかに日経平均に対してはインパクトが大きくなります。

● 総合的に見れば、債権放棄を迫られるメガバンクの株価にも、ある程度のプレッシャーが掛かる可能性があるでしょうから、波及効果としてはJAL単体の下落よりも大きなインパクトになる可能性があります。でも、はっきり言って、JALの経営破綻はサプライズでも何でもありません(^^;。もう何ヶ月も前から分かっていたことだし、現在は手続の最終局面ってこと。それよりも、為替の水準がどうのこうのだとか、米国の株価がどう動いたかの方が、はるかにインパクトがあるでしょうね。

● 最後に蛇足的に少し。この先、日経平均はあと2銘柄の臨時入替えがあることが、ほぼ決まっています。一つは、新日本石油(5001)と新日鉱HD(5016)の経営統合で、これは今年3月末の話。もう一つは、三菱ケミカルHD(4188)による三菱レイヨン(3404)のTOB・完全子会社化に伴うもの。現時点では時期は未確定ながら、春先ってのは違いなさそうです。指数ヲタクにとっては、昨年秋の定期銘柄入替えが無かっただけに、ちょっと心躍る春先になりそうです(^o^)。

コメント
この記事へのコメント
すいません。
ありがとうございます^^
2010/01/14(木) 22:37 | URL | RI #-[ 編集]
Re: Re: 銘柄入れ替え
> > 5001も候補に入ってましたが
> > これは外れる可能性があるってことですか?
>
> ちょっとお書きになっている話が良くわからないのですが…(^^;。新日本石油も新日鉱も日経平均採用銘柄で、この先、会社統合により新しい持ち株会社ができます。日経のルールをお読みいただけるとわかるのですが、経営統合による新会社は基本的にそのまま採用されます。一方、2社が1社になるので、その代わりに採用される銘柄がひとつできる、という話です。
2010/01/13(水) 15:24 | URL | 虎年の獅子座(管理人) #-[ 編集]
銘柄入れ替え
5001も候補に入ってましたが
これは外れる可能性があるってことですか?
2010/01/12(火) 22:26 | URL | RI #-[ 編集]
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