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このマーケットコメントは、資産運用を職業とする国内外の機関投資家顧客向けに書いている落書き帳です。少し違った視点から相場を眺めている一人の声としてお楽しみ下さい!

日経平均先物誤発注事件 ● オーバーナイトの欧米市場が祝日での翌朝とあって材料不足。そして今日からネクタイを締めなくても良いって会社も多く、何となく気だるい雰囲気が漂う朝。その寄付き直後、日経平均先物市場でちょっとした事件とパニックが発生しました。ざっくり100万枚ほどの指値売りが出たのです、想定元本ベースで金額換算すると、なんと10兆円弱の売り!あまりに異常な規模だっただけに、多くは「誤発注だろう」と考えたでしょうけど、気だるい雰囲気を吹き飛ばすには十分以上のインパクトがある事件でした(^^;。

● 結論から書くと、いくらかの取引が成立した後に、大部分の指値注文は取消になりました。そして、後場中盤にはドイツ証券から、『大阪証券取引所における誤発注について』 とのリリースが同社HPにて公表され、犯人が自首して確定。ザラ場では、間違えたポジションの決済が残っているとの思惑も流れていたので、その点に関しては、これで一応、一件落着となりました。

● 右写真は市場筋の間で流れていた「その瞬間」の板を写真に取ったものです(撮影者不詳)。他にも こちら も見事にその瞬間を捉えています。いずれにしても、如何に状況が異常だったかがご覧頂けると思います。その注文そのものは、約1分半程度で全て取り消されたので、瞬間に行動できた方々が結構いらっしゃったってことです。その点、個人的には呆然と見ていただけだったので、自分の行動パターンについて、若干、反省モード(^^;。

日経平均先物日中足 ● 実際に価格面で影響があったかですが、左側は今日の日経平均先物(6月限)の日中足です(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。寄付き直後にスパイクが出ているのがご覧頂けると思います。実際にこの誤発注で成立した取引は、出された注文総量(約100万枚)からすると僅かだった様子ですが、それでも気だるい雰囲気の朝にはかなりの出来高だったことは真実。

● 誤発注そのものもそうでしょうが、これを見て売りや買いで動いた参加者も当然のように居たでしょうから、それだけ値動きが増幅された可能性は十分に考えられます。また、思惑が絡んだのも当然の話。下がらない、上がらないとなると、余計に思惑が交錯するのもしかり。単位間違いの発注だったとしても、例えば100万枚ではなく、実際に1万枚売りの注文があったと仮定すると、インパクトは避けられません。そうやこうやで、結局はどの方向にも動きが取れない1日になってしまいました(^^;。

● ツイッターでは、実際にマーケットに参加されている方々の様々な叫びが飛び交っていたのですが、さすがに世間一般のニュースとは違って、速報性も抜群だし、色々な面で状況を把握するのにとても役立ちました。例えば、ftk2401氏の「ざっと見ると 9730円180枚売り30本。 9720円180枚売り166本。 9710円180枚売り686本。 9700円180枚売り1061本。 9690円180枚売り4442本」なんて記述(本文はこちら)。状況把握にはもってこいです(^^;。これで180枚ロットのアルゴが暴走したらしい、ってことも想像できますしね。

● さすがにこれを書いている時間になると、ニュースにも色々と流れています。代表的なところとして、Bloombergの「日経平均先物に一時98万枚の売り注文、ドイツ証券が誤発注」 あたりなら分かり易いと思います。

● しかし、これがきっかけで相場が暴落しなくて良かった(^^;。指値ではなく、成行で出されていたら、本当のパニックになったでしょうから…。きっかけは何であれ、結果的にロスカットを大量に引っ掛けてしまえば、理由以上に相場が動くなんてことは珍しくないのですから…。

追記

● 「日経225先物の板情報を再現できます!-225先物録画」というサイトがあります。URLは http://225playback.com/ です。本日(6月1日)限りの話みたいですが、ここから今日の日経平均先物の板の動きを動画で見ること(動画ファイルのダウンロード)が可能です。かなり重たいファイル(110MB、解凍すればAVIファイル)ですが、4時間強収録されているなかで、今朝の「事件」は寄付き直後だったので、すぐに問題の場面が見付かると思います。「本動画の全部、又は一部を、無償・有償問わず、複製・改変・上映・上演を行うこと、および、放送・通信・有線放送等により公衆に送信することは法律により固く禁止されております」ってことなので、この辺のポリシーは理解をよろしく。

● なお、「225先物録画」のサイトから「虎年の獅子座」へのリンクがありますが、特に相互リンクなどの関係はありません。というか、私の方からは何もやってないんで、いつも密かに申し訳なく感じている次第だったりします(^^;。

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● 一昨日、昨日と、都内で開催された某ヘッジファンド・コンファレンスに参加してきました。この手のコンファレンスで重要なのは、プレゼンテーションやパネルディスカッションやらに加えて、英語でいう「Networking」というもの。日本語で言えば「人脈形成」とか「親睦を深める」という意味での、顔合わせというか出会いの場所ですね(^^;。この業界は取引所取引の商品と違って、どこかに参加者が集う場所が決まっているのではありません。人と人とのつながりが、ビジネス関係の第一歩となる世界なので、人脈は本当に重要。コンファレンスとは言いながら、プレゼン等の間のコーヒーブレークにしても、30分程度は用意されているのが当然です。なぜかと言えば、そこでの立ち話が何よりも重要な人脈形成になるんです(^^。

● それはさておき、日本で開催されるこの手のヘッジファンド・コンファレンスも、振り返ってみれば、ピークは多分、2005年とか2006年頃だったと思います。誰もが今でも語りつぐ「ライブドア事件」を挟んだ時期ですね(^^;。それ以降、日本株関連のヘッジファンドは多くが苦境に陥ったことに加え、中国株を始めとする新興国にグローバルな投資家の興味が向かってしまったのです。そして、2007年8月のバリュー崩壊相場、さらに2008年9月のリーマン・ショックと、まぁ、「これでもかぁ!」というほど色々な事件が発生し、日本関連は一気に冷え込んだというのが実情です。

● ここ1年も、特に日本にある外資系証券関連で聞こえてくる話は、首切りだの、東京から香港に部署をそっくり移しただの、その手の話ばかり(^^;。そして、久しぶりにヘッジファンド・コンファレンスに参加する機会を得たものの、「そんなに日本に対して急に興味が戻ったとは思えないけど…」って、ちょっと不思議な気分でした。

● 参加してみての印象は、「もっと酷いかと思ってたけど、意外に盛り上がっているやん!」って感じ(^^。閑古鳥が鳴いているのかと心配していたものの、それなりに参加者が居たし、日本人:外国人比率は7:3程度。意外に外国人の参加が多かった印象でした。もっと酷いかと心配していたんですけどね…(^^;。ただ、こういったコンファレンスをスポンサーする企業はかなり減ったらしく、他の参加者の方々に話を聞くと、企業ロゴの登場は数年前の半分以下とのことでした(^^;。

● 一方、プレゼンやパネルディスカッションにも興味深いものがあり、実際の現場で運用しているマネージャー連中や、逆にヘッジファンドを深く調査する「ファンド・オブ・ヘッジ・ファンズ(FoHFs)」の連中、さらに年金基金の方々など、色々な声が聞けたので、ホンのその一部分を抜粋して書いておきましょう。

● なお、あらかじめ書いておきますが、これらは一人の発言ではなく、色々なプレゼンやディスカッションのなかで私が印象的に感じた部分を抜き出してあります。主に日本株関係についてです。また、多くが英語での発言だったので、私が適当に和訳しています。さらに、何らか弊害が発生することは避けたいので、発言者等の固有名詞は敢えて書きません。為念。

  • 日本株への注目度は以前と比較すると随分良くなった。割安感もそれなりに出てきているし、他国の市場と比較すると、色々な意味で安定感がある。単純に日本株を好むということはないにしろ、世界的な混乱のなかでは、レラティブに見て日本株の印象は良い。
  • 先進各国の株式市場で共通して見られるのは、企業利益は増加しているものの、レベニュー(売上)が減少していること。これは、成長がトップ企業に偏る可能性を示唆している
  • 過去数週間の世界中の市場は、リクイデーション・ドリブンで動いている。そのため、理論的に筋道が通らない値動きがあちこちで見受けられる。
  • リーマン・ショック後の特徴の一つとして、何かあったときにエクスポージャーやリスクを落とす動きがすぐに出てくる。一つはリスク管理の観点だが、投資家がHFの流動性を強く求めている面も大きい。
  • 政府の対応に疑問が残る状態が長引きそうで、ボラティリティーは高めで推移すると予想している。突然の政策変更でマーケットが大きく動かされる事態はこれからも続くだろうし、運用者も投資家もそれに備えておく必要がある。
  • ディストレス投資に注目。今後、経済状況が回復するなかでも、かなりの企業破綻の発生も同時に起こる可能性がある。それだけに単なるバリュー投資よりも、ディストレス投資により魅力を感じる。
  • デビデンド・スワップの価格推移を見ると、これまで増配基調を期待していたマーケットが、一気に減配へと心理が変化している。これは、中期的な業績の頭打ち、さらに中期的な下げ相場を予見している可能性がある。
  • LIBORの上昇は、相場にとって高血圧が悪化しているようなもので、健康被害は非常に大きくなる。当然、HFは非常に苦しくなり、流動性の枯渇が一層のリクイデーションを誘発している。リーマン・ブラザーズ崩壊の前に似ているのが、非常に気掛かりだ。
  • この2週間というもの、日本株のLSファンドは非常に厳しい状況に陥っている。大きなロングの解約があって、それがLSファンドの解約やポジション縮小を誘発している。
  • リスク縮減がHFの最大のテーマになる光景は、 2007年、2008年に見たのと似ている。逆に言えば、その後の相場でチャンスが訪れるハズだが…。
  • iTraxxの直近での上昇はかなり異常な状態。不思議なのは、現物社債にそれほど極端な動きがないこと。敢えて理解するのであれば、トップライン企業のファンダメンタルズはしっかりしているという意味だろうが…。
  • 相場には4段階あると考えている。急落後から順番に、回復、楽観、疑念、そして失望とステージが循環する。現在は疑念の段階に来ていると考えており、今後の展開次第で大きな収益機会もあるだろう。

● 他にもHF規制の問題についてや、HFと投資家との関係、デューデリの話など色々あったのですが、ここでは主にマーケット関係に絞っておきました。なお、蛇足かもしれませんけど、「収益機会がある」というのは、あくまでもHFを運用する、もしくはHFに投資する立場からの見方です。ロングオンリーとは全く視点が異なっているので、為念(^^;。

● ヘッジファンドが全て正しいなんて寝惚けた考えは無いのですけど、ある一つの大きな投資主体の見方として聞くのは、頭がとてもリフレッシュできました。

● 日本時間で今朝早朝、MSCI Barra から5月の定例指数見直しの発表がありました。MSCI Barra の正式リリースはこちら(PDFファイル)です。リバランスは5月26日終値基準で実施されます。

● 事前からある程度予想されていた通り、今回、日本株に関しては、新規採用も削除もありませんでした。1年間のスケジュールとしては、5月の見直しが一番大きな動きになることが多いのですが、今回は、すでに第一生命は Early Inclusion で指数に追加されていることもあって、もしあったとしても、中小型株の端っこの方だけだろうと考えていたのですが、それもありませんでした(^^;。

● ただ、個別銘柄ベースでFIF変更や株数変更はかなりの量の変更があり、これが個別、全体に影響を与える可能性はあります。ただ、FIF変更や株数変更の詳細は、MSCI Barra では有料ライセンス情報なので、かなりお高いライセンス契約をしていないと見ることが出来ません。もちろん、個人ベースでどうのこうのという金額ではありません(^^;。そのため、ここでは一切の詳細は書けませんのであしからず。

● もっとも、それだけでは面白くないので、複数の市場関係者から教えてもらった情報を元に計算すると、市場全体としては、日本株からはかなりの規模での資金流出になる見込みです。計算を間違えてないとすると、ざっと1000億円強程度の資金流出が予想されます。FIF引下げなどの影響もあるのですが、大きいのはイスラエルが指数に新たに採用されることによって、相対的に日本株全体のウェイトが下がる影響です。米国株なども同様に資金流出になる見込みです。もちろん、個別には資金流入になる銘柄もあると予想されるんですが、全体を計算すると、という意味です。追々、各種メディアにも、この手の情報が流れてくると思います。

● なお、蛇足の蛇足ですが、資金流出があるからといって、相場が下がると言うつもりはありません。現時点でデータを揃えて計算すれば、誰もが同じような結果を得られる話なんです。相場がその通りに動くんだったら、誰も苦労しませんって…(^^;。要は、皆が認知していることを自分も知った上で判断する、ってことだと考えています。

米CNBC動画 - NYダウ1000ドル安局面 ● 米CNBCのサイトに、NYダウが5月6日(NY時間)に一時、前日比で1000ドル安近くまで急落した時のリアルタイム画像がアップされています。もちろん、全て英語ですが、雰囲気は十分以上に分かって頂けると思います。さらに、英語が分かれば、如何に異常な事態だったのか、その異常さがより分かると思います。

● CNBCのJim Cramerが叫びまくってます(^^;。まさにNYダウが1000ドル近く下げた局面をリアルタイムで伝えています。保存版ですね、ホンマ。しかし、あの瞬間にP&Gのチャートを出していたCNBCは凄いというか…。

● 動画は、こちら("Cramer Sees Error In P&G Share Pricing")と("Dow Drops on Greek Protests & Trading Error")からリンクできます。初っ端にCMが入りますが、その後が本番です。

● 前者はNYダウがまさに1000ドル安に接近したところ、後者はそこから一気に500ドル安まで戻ったところです。偶然かもしれませんが、どちらでもP&Gのリアルタイムグラフを取り上げているのは凄いです。

● 昨晩(現地時間で5月6日)のNY株式市場では、トンでもないことが起こりました。一時、NYダウが前日比で1000ドル近くも急落した後、アレヨアレヨと戻ったのです。最終的に大幅安は大幅安だったものの、それにしても、まれに見る乱高下の1日でした。

● その原因の一つ(全てではない!)として、大口の誤発注があったと伝えられています。この辺は色々なメディアでもニュースが流れているので、詳細はそちらにお任せするとして、ここでは記録として日中足等を掲載しておきます。

NYダウ四本値
始値高値 安値終値前日比 前日終値
5/710,862.2210,925.869,787.1710,520.32 -347.8010,520.32

● さらに、として、NYダウの日中足と誤発注があったと伝えられているP&G(PG)株の日中足(出典:Yahoo! Finance)を付けておきます。

NYダウ日中足P&G(PG)日中足
NYダウ 日中足 P&G 日中足
(出典:Yahoo! Finance)

● 見れば見るほど凄いですね。なお、色々な報道によると、NYSEはこの急落局面での取引を「取り消す」と表明しています。この辺の詳細も、各種報道をどうぞ。

● 毎年、日本がGWで遊び呆けているとき(^^;に発表があるパターンなので、「そろそろかな?」と考えていたら、やっぱり来ました。MSCI Barra の5月定例指数見直しは、日本時間で5月12日(水)の早朝に発表される予定です。

● MSCI Barra からの正式なリリースはこちら(PDFファイル)からどうぞ。

● 既に大部分の方々が理解されていると思いますが、MSCI Barra の場合、5月と11月の定例四半期見直しがメジャーで、8月と2月は微調整リバランスです。つまり、今回の5月リバランスは、ソコソコ大きなものになる可能性があります。また、良くあるパターンとしては、5月は11月よりも規模が大きく、年間で一番大きなリバランスになる場合が多いのです。もっとも、第一生命は既に Early Inclusion でMSCI Barra に入ってしまったので、それ以外ってことになりますけどね。

● 追々、証券各社から銘柄入替えなどの予想レポートも出てくるでしょうから、注目しておきましょう。もっとも、過敏になり過ぎてもロクなことはないので、指数ヲタク系のイベントとして楽しむ心の余裕をお忘れなく!

第一生命(8750)日中足

● 第一生命(8750)の上場2日目。もっとも、初日は擬似ダッチ方式として、一本値取引で即売買停止になったので、実際にザラ場取引があったのは4月2日が初日。この4月2日終値で第一生命株はFTSEに新規採用となりました。時価総額が大きなIPO銘柄に許される「Fast Entry」という早期算入制度に基づくものです。この辺の詳細は、以前このブログでも書いたので、『第一生命株、 FTSE算入は4月2日終値基準で』をご参照下さい。

● 今回は記録保存の意味合いで、FTSE算入日の最後の最後に何が起こっていたかを書いておきます。まず左側グラフは第一生命の4月2日の日中足(出典:Yahoo! JAPAN Finance)です。ちょっと分かりにくいのですが、最後の最後にピョコンと跳ねて下がってしているのが分かると思います。それに伴って、かなりの出来高が出来ているのも。この辺は、かなり典型的な指数イベント銘柄の動作です。

● 東証の売買システムが arrowhead になってから、かなりの売買をこなせるようになっているのは誰が見ても分かるのですが、今回の第一生命でも、その真価を発揮。最後の1分間だけの取引に限定してみると、165,900円で14時59分がスタート。そこから166,800円まで上昇して、14時59分の最後に記録されているティックは163,500円。そして大引けは162,500円。

第一生命(8750)歩み値抜粋 ● 値動きもさすが指数イベントとして"相応しい"貫禄があるんですが、驚くべきはティック回数。14時59分と銘打たれた取引だけで、なんと453回(!)。

● 右側はマネックストレーダーの歩み値画面の抜粋ですが、これでも14時59分部分のホンの一部です。実は、この画面を更新しながら手作業でティック回数を数えたので、多少の間違いはあるかも知れませんが、意図はご理解頂けるかと…。どちらにしろ、1分間に453回もの取引が成立しているんだから、リアルタイムに目で追い掛けるのは、いくら動体視力がスーパーマン並でも不可能です(^^;。

● ちなみに、14時59分に成立した出来高は 17,605株。大引けのワンティックで 42,666株の取引が成立しています。第一生命の全日出来高は 1,078,553株だったので、14時59分と大引けのホンの1分間で、60,271株、5.59%もの取引が成立したことになります。ただ、実はこれは事前に予想されていた10万株程度という数字からすると少なめ。背景としては、ザラ場引けリスクなどを考慮して、実際には、もう少し前から執行していたためと考えられます。

● いずれにしろ、第一生命が算入される株価指数として、FTSEはマイナーではないけど、MSCI BarraやTOPIXなどと比較すると、規模としては小さい方です。今後、MSCI Barraでも「Early Inclusion」(FTSEで言うFast Entryと同意語)があります。

● 実は、既にMSCI Barraから公表されていますが、「4月15日より第一生命は MSCI Barra に新規採用されます」(リンク先は英文のMSCI Barra発表リリース)。4月15日から指数採用ということは、基準となるのは、前日の4月14日(水)の終値。つまり、ここでFTSEの場合と同様の指数イベントが発生することになります。

● FTSEよりは MSCI Barraの方が連動ファンドの規模が大きいと考えられるので、素直にいけば、想定される買い規模は大きくなると考えられます。もちろん、FIFなどが公開されていない(契約者のみのライセンス情報)ので、詳細は不明ですが・・・。

● 一応、この手の指数イベントの経験が浅い方もいらっしゃるでしょうから、蛇足的に書いておきますが、指数連動ファンドの買いニーズがあるからと言って、株価が上昇するなんて寝惚けたことは言うつもりありません、為念(^^;。それとこれは別モノです(キッパリ断言!)。

● まぁ、それでも、一応、期待感を込めて眺めておきます(^o^)。

● 3月19日までの予定で進められていた三菱ケミカルホールディングス(4188)による三菱レイヨン(3404)に対する公開買付け(TOB)が終了。3月19日、20日に両社から結果が発表されています。どちらの会社のHPにもリリースが掲載されていますが、両社分のリリースが載っていて見易いと思えるのが三菱レイヨンのリリースなので、そちらをご紹介しておきます。『株式会社三菱ケミカルホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの結果ならびに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ』です。何はともあれ、こちらをご確認ください。

● 要点とすれば、(1)三菱レイヨンの議決権数の 78.19%の買い付けが成立した、(2)今後、三菱ケミHDの株式との株式交換を実施して完全子会社化を目指す、(3)株式交換後は取引所規定に基づいて上場廃止となる、ってところです。(2)と(3)は既に発表されている方針通りで、変更はありません。

● なんで、このTOBを気にするかと言えば、私個人にとっては、ただ一点のみ(^^;。三菱レイヨンが日経平均採用銘柄で、上場廃止となった暁には、日経平均に新規に追加補充される銘柄が出てくるからです。実は、少し前にこのブログ上で、「日経平均銘柄入替え、今日の日新製鋼/日本電気硝子の値動きと今後」と書きました。ただ、ここには不正確な部分も含まれていたので(打ち消しラインを入れてあります)、その部分の訂正と今後の展開について「推理」してみたいと考えています。

● まず、TOBの結果を受けて上場廃止が決まったかと言えば、実は決まっていません。前回のアップで「75%の浮動株比率」云々と書いた部分は間違いでした。というか、古い基準だったのです。現在の流通株式比率に関する基準は、「5%未満」で上場廃止基準となってしまいます(東証HP、上場廃止基準(一部・二部))。「そう言われてみれば…」って感じです(^^;。変更があったのは、言われて思い出したってのが正直なところで、完全に抜け落ちていました。ホント、「そう言われてみれば…」だったのです。すみません。

● 今回発表されたTOBの結果により、議決権の 78.19%が固定されたことになるので、単純計算で残りは 21.81%。東証HP内に「流通株式数等(分布状況)基準」の定義があるのですが、「上場株式数の10%以上を所有する者」というのが一つの鍵になります。ただ、TOB前の三菱レイヨンの大株主リストを見ても、最大が日本マスタートラスト信託口の4.7%。つまり、その時点で10%以上を保有する投資家は居なかったし、TOB後に三菱ケミHD以外に、10%以上を保有する投資家が出たと考えるのも不自然なので、この可能性は排除して差し支えないと考えます。つまり、株式交換が終わるまでは、「5%未満」の上場廃止基準に抵触することはなさそうです。

● 指数銘柄入替えの観点からは、上場廃止でなくて二部降格(正確には"指定替え")でも該当するのですが、二部降格には浮動株比率の基準はなく、時価総額やら株主数とかの基準はあるものの、TOB後の三菱レイヨンでも、これらで該当するのはなさそうな雰囲気です。パッとみて分からなかったのが株主数だったのですが、リリースによると、昨年9月末時点の総株主の議決権の数は568,504個あり、その内、447,434個が今回のTOBで異動。残りは121,070個ってことになります。この議決権が何名の株主に保有されているかが問題ですが、「2,000人」未満だと二部降格基準該当になります。ただ、該当するとしても、猶予期間が1年あるので、すぐに二部降格となって指数から外れる、というシナリオの可能性はほぼゼロだと考えられます。

● つまり、上場廃止に向けては、「流通株式数等(分布状況)基準」で「5%未満」というのが鍵になります。東証HP内の記述を見ると、これは『「株式の分布状況表」及び「有価証券報告書」をもって審査を行います』と明記されています。さらに、『審査は各事業年度の末日の状況について行います』とも明記されています(東証HP「流通株式数等(分布状況)基準」)。有価証券報告書も株式の分布状況表も、事業年度の末日の状況について会社が報告するものです。つまり、3月末の状況を東証に報告する正式な書類をもって、東証が上場廃止の決定を下す可能性が大きいってことです。時期的には、大体ですが、5月~6月に掛けてになりそうですね(昨年は6月29日に決算公告、6月30日に三菱レイヨンのHPで有価証券報告書が公開されている)。

● ただ、今回のTOBだけでは流通株式比率は「5%未満」には達していません。計算上、まだ 21.81%もあるのです(^^;。株式交換が実施されるにしても、3月末を過ぎてからの話になるでしょうから、今年の有価証券報告書には間に合いそうにありません。東証が上場廃止を決定しないと(整理ポスト入りしないと)、日本経済新聞社は日経平均の銘柄入替えを出来ません。そのため、色々考えると、株式交換が成立して、その後、臨時で有価証券報告書/株式の分布状況表の提出があるかどうかですね。もし期末ではない臨時提出がないとなると、三菱レイヨンに関する日経平均の銘柄入替えは、丸々1年以上先ってことになってしまいます。

● それはそれで実はちょっとした問題があり、その期間中、かなり流通株式数が少ない状態で日経平均採用銘柄として存在し続けることになってしまいます。現在でも流通しているのは発行済み株式数の2割程度。この先、株式交換が完了すると、実質的には流通株式が無くなってしまうんです(^^;。これはさすがにマズイでしょうから、この辺の時期に何らかの動きがあると予想しています。

● 東証HP内に文章としては書かれていないのですが、画像部分に「分布状況表提出は任意(中間期)」との記述があります。つまり、可能性として考えておくとすると、株式交換が夏頃に実施され、その結果としての「分布状況表提出」が中間期(もしくは任意の日付)で実施され、東証はそれに基づいて上場廃止を決定する、というシナリオです。まぁ、これはあくまでも私の想像ですが…(^^;。いずれにしろ、現時点で考えられることは、まず、株式交換が実施されるところまで待つ、ってことでしょうか…。何か追加の話があれば、また書きます。

● 昨日大引け後に発表された日経平均の銘柄入替え(日経の記事はこちら日経平均プロフィル内のリリースはこちら)。発表明けの今日、新規に採用された日新製鋼(5407)と、事前予想で次点で有力だった日本電気硝子(5214)の値動きを日中足で復習しておきましょう。

日新製鋼(5407)日中足日本電気硝子(5214)日中足
日新製鋼(5407)日中足 日本電気硝子(5214)日中足
(出典:Yahoo! JAPAN Finance)

● 全体の感想としては、事前に日新製鋼がかなり先回りして買われていた印象だった割に堅調だったこと。さらに、日本電気硝子は、寄付きこそ失望売りを食らったものの、ザラ場で切り返してプラスで終わっているのはご立派、ってこと。日新製鋼については、素直に需給好転期待が先行したからでしょうけど、日本電気硝子がなぜ売られなかったのか…。考えるに、日経平均銘柄入替えはこの春先にもう一つチャンスがあり、そこでは日本電気硝子が採用筆頭候補になるから、と考えることが出来ます。

● これも復習ですが、この先、三菱ケミカルホールディングス(4188)による三菱レイヨン(3404)の完全子会社化で、三菱レイヨンは上場廃止になる予定。このため、同株の替わりとして日経平均に一銘柄、新規採用されることになります。実は、今回の発表でこちらも一緒に前倒し発表される可能性も無くは無かったのですが、現在は三菱ケミHDによるTOBが進行中。まぁ、結果に間違いはないだろうけど、TOBが終わるまでは完全子会社化は正式には決定していないので、まだ東証から三菱レイヨンの上場廃止は発表になっていないのです。

● もちろん、この件は、揉めているような案件でもなく、3月19日にTOBが終了して結果が発表され、それと共に東証から三菱レイヨンの上場廃止が発表されるハズ。そして、過去の例からすると、東証の発表後に日経から銘柄入替えについての発表があり、その2~3日後には実際の銘柄入替えがある、という手順になるはずです。ということは、想像すると、3月19日(金)の夕方から夜にかけて日経から銘柄入替えが発表され、3月22日の祝日(月)後の週にでも、実際の銘柄入替えが発生することになりそうです。もちろん、これはあくまで私の想像ですので、正式には日経からの発表を待つことになります、為念。

● 現時点では、銘柄入替えを予想するのに使うデータ面には差異はないので、採用候補銘柄としては、今回外れだった日本電気硝子が、順送りに今度の筆頭候補になりそうです。他に、トクヤマ(4043)や三菱瓦斯化学(4182)などが素材セクターの流動性面から候補として出てきます。数字としては、大同特殊鋼(5471)がその次ぐらいに来るのですが、日新製鋼が採用された今となっては、可能性は低そうですね。

● また、コスモ石油(5007)も採用候補として考えられそうですが、コスモ石油は素材セクターのなかで、新日本石油と新日鉱HDという石油株の替わりとして光が当たっていた面がある銘柄なので、可能性としては次回は低めランキングになるのは避けられそうにありません。もっとも、逆説的には石油が最初に入らなかったので次に石油が入る、という可能性も有り得る話ですが…。この辺の謎解きが興味深いところです(と他人事…(^^;)。

● いずれにしろ、この仮定スケジュールで行くと、あとざっくり2週間待ち。となると、日本電気硝子を持っていたとしても、慌てて売却することもないと考えるのは、ある意味で当然かもしれません。さらに、次回の採用を期待するのであれば、今朝の寄付きで売られたところなどは、"絶好の買い場"と考えた向きが居ても、全く不思議ではありません。3月19日の大引け後に注目しておきましょう。


追記(3月11日)

● え~~っと、誤解があるといけないので追記です。三菱レイヨンの上場廃止が3月19日に発表されるとは限りません。三菱ケミHDは全株式取得を目指しているのですが、もちろん、TOBが成立しないとそうなりません。現実的に考えて、TOBそのものの成立は大丈夫に思えるのですが、それから外れた株は、株式交換によって三菱ケミHDの株式に交換されることが予定されています。これは正式なリリースに記載されている通りです。

● 取引所が三菱レイヨンを上場廃止にするには、上場規定に沿った形で該当する必要があります。そのひとつが浮動株基準で、75%超が特定株主の所有になってしまうと上場廃止基準に該当することになります。またTOBの買い付け株数が95%でも基準に該当することになります。通常は有価証券報告書の提出で確認される事柄なので、TOBの結果だけでそうなるかどうかは、現時点では分かりません。ということで、三菱レイヨンの上場廃止発表は、最短で3月19日。最長だと、株式交換が実施されて、有価証券報告書で確認されてから(数ヵ月後)ってことになります。追加でした。

● 本日(3月9日)大引け後、ほぼ事前の予想通り、日経平均の銘柄入替えが発表になっています。ニュース記事は、『日経平均銘柄入れ替え、日新製鋼など3銘柄を新規採用』(日経)で、日経平均プロフィル内にも正式リリースが出ています。記事には「3銘柄」と出ているのですが、そのうち2銘柄は会社統合に伴う自動的なもので、新規に採用されたのは日新製鋼(5407)です。

新規銘柄除外銘柄
日新製鋼(5407)---
JXホールディングス(5020)新日本石油(5001)、新日鉱ホールディングス(5016)
NKSJホールディングス(8630)損害保険ジャパン(8755)

日新製鋼(日足) ● 実は、今回のチョイスは、事前に証券各社から出ていた色々なレポートの通り、本命が選ばれた結果になりました。つまり、"サプライズはなし"ってことです(^^;。

● ネット上で無料で見れるレポートとして重宝するのに新光総研から出ているレポートがあるのですが、そこでも2月2日に『日経平均株価採用銘柄の入替候補を探る~新日本石油と新日鉱HDの経営統合に伴う補充~』と1ヶ月以上も前に出ていたぐらいです。他の証券各社レポートも、本命が日新製鋼(5407)でほぼ一致。対抗として日本電気硝子(5214)。さらに、穴としてコスモ石油(5007)あたりの銘柄が出ていました。なので、今回はサプライズは、ほとんど発生しなかったことになります。

日新製鋼(対TOPIX) ● 左上は日新製鋼の日足(出典:Yahoo! JAPAN Finance)です。ご覧頂いて分かるように、2月中旬頃からじり高歩調になっています。もちろん、マーケット全体の上昇が影響しているのですが、それをクリアにするために、対TOPIXでレラティブでチャートを描いてみると、右図(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。2月中旬以降の局面だけを取ると、日新製鋼が対TOPIXでそれなりのアウトパフォームをしていたことが分かります。

● と言うわけで、明日以降の相場では、日新製鋼の動きとともに、外れ銘柄の日本電気硝子の値動きにも注意しておきましょう(^^;。もうすぐビッグSQですしね。なお、実際の銘柄入替えは今月末前に実施されます。最初に除外が来て、4月に入ってから追加となります。その辺の詳細は上記リリースをご覧下さい。

MSCI Barra ● 日本時間で昨日、2月11日(木)早朝に、MSCI Barraから2月の四半期リバランスが発表されています。MSCI Barraからの公表リリースはこちら(PDFファイル、英文)からどうぞ。

● 結論から書くと、日本株に関しては新規の追加も削除もなく、株数変更の微調整だけに留まっています。元々、MSCI指数が大きく入替えられるのは5月と11月のリバランスで、それ以外の四半期は主として微調整。大型上場や大型増資などは即座に追加採用され調整されるので、その辺のエキサイトメントもなく、この時期は、それに属さない程度の規模の調整をまとめてやる、って感じです。なので、事前から「何もない」と思われていたし、実際に「何もない」というのが今回の四半期リバランス。その意味では、サプライズも失望もありません…(^^;。

● じゃあ、何で書いているのかと言われれば、現時点で「何もない」と考えられていることを書いておくのも、まぁ、記録かなと…。そしてもし何か起これば、「あの時はナメていた」と反省することになるだろうし…(^^;。

MSCI Barraのサイトを隅から隅まで探しても、実は、株数変更などの詳細情報は掲載されていません。以前から何度も書いているように、これらの情報はライセンス情報で有料です。それも、決してお安くない値段です(^^;。ライセンス契約している人だけに教えてくれる情報ってことです。日本では、大手証券会社(外資系はほぼ全部、国内系もいくつか)や大手投信会社などが契約しており、徐々にその辺からレポートが出て、それがニュース記事になり、世間一般に周知されていくというのが普段の手順です。で、これを書いている時点で色々とニュース記事を検索してみたのですが、どこにも見付かりませんでした。それだけ「何もない」ってことです(^^;。

● 色々な情報ソースから教えてもらったところ(なので、全てぼやかした伝聞調です(^^;)では、日本株で金額ベースで一番大きく増加するのは野村HD(8604)とのことですが、それでも1日平均売買代金で考えると0.2日程度にも満たない水準。まぁ、大引け間際の瞬間インパクトはともかく、中期的なインパクトは非常に考え辛いですね(^^;。金額ベースで一番大きく減少するのは三菱UFJ FG(8306)とのことですが、対1日平均売買代金では1桁%の水準。誤差以下の範囲です。まぁ、1日平均売買代金ベースでもう少しインパクトが大きそうな銘柄もいくつかある様子ですが、それでも、1日以上のインパクトがありそうな銘柄は計算上は出てこない状態。まぁ、無風に近いですね(^^;。

● 一方、日本株全体で見た場合の資金フローですが、敢えて書けば若干の流出みたいです。ただ、それでマーケットが大きく動くような規模ではない様子(敢えて詳細は明記しませんが…)。これらのリバランスは、今月末、つまり2月26日(金)の終値で実施されます。

● 先週突如として出てきたオバマ政権の「新金融制度規制案」(日経では新金融規制案と記述、他にも銀行規制強化案との言い方もある)。正確に記すと、いずれ何らかの規制案は出てくるだろうというのは予想されていました。実際、英国では金融機関の高額ボーナスに対する特別課税が出たし、米国でも金融機関に対する特別課税という案が出ていたんです。ところが、今回出てきた規制案の内容は、ほぼ市場関係者全員の想定を超えるもの。グラス・スティーガル法の時代を知っている世代にとっては、その復活を意図したと感じ取っただろうし、大部分の人々が大衆迎合的と感じただろうし、モロ社会主義的に見えるし、その突然(に思える)の方向転換はかなり極端。見方によっては、投資銀行というビジネスモデルすら否定する格好になっています。

● ひとまず、現時点で出ている規制案について簡単に書いておくと、下記の点が伝えられています。

  • 銀行(商業銀行)による自己勘定取引(プロップ・トレーディング)の制限
  • 銀行(商業銀行)によるヘッジファンド、プライベートエクィティ兼営(投資)の禁止
  • 規模拡大の制限(預金シェア10%上限)

● 実際にこれらのビジネスを知っている方々にとっては、本当にこの辺が実施されるとなると、どんなに大きな地殻変動になるかは、容易に想像できると思います。リーマン・ショックを受けて、米国のかつて"証券会社"と呼ばれた大会社は全部"銀行"になっちゃってます。ゴールドマン・サックスしかり、メリルリンチしかり…。そこが大きな影響を受けようとしているってこと。ストレートに解釈すると、積極的リスクテイクが出来なくなるってことだし、リスクテイク無しにはリターンは生まれません(当然の話)。そして、リスクテイクが出来なくなるってことは、ポジション縮小をせざるを得なくなる可能性が高く、それは信用収縮ってこと。信用が収縮するマーケットがどうなるかは、誰もが簡単に理解できると思います。リーマン・ショックでそれ経験したばかりなのに…。

● 今朝の日経には、日本の銀行はそれほど大きな影響はないなんて、実にの~~天気な声が掲載されていました。確かにヘッジファンド投資やプライベートエクィティなどに関してはそうでしょうけど、それは単に「周回遅れ」だから。選択してエクスポージャーが小さいのではないのです。さらに、忘れちゃあいけないのが、日本の株式市場は60%近くの売買が外国人投資家によってなされていること。そして、株価の上下に対して、日本の銀行はかなり脆弱な体質だってこと。その辺が見えてないのか、敢えて見ないようにしているのかは分かりませんが…。

● マーケットにとって何よりも最悪なのは、今回出てきた規制案の全体像が見えてこないこと。「詳細は今後詰める」というのは、想像次第でどこまでもワーストシナリオが膨らむ可能性があるってことで、マーケットも、少なくとも一時的には、それを織り込みに行かざるを得ないのです。こういった場合、往々にしてマーケットは行き過ぎます。ワーストを織り込みに掛かるんだから、それは当然のこと。さらに、信用収縮というのは、最初のきっかけは大したことが無かったとしても、一旦転がり出すと、転がり出した方向に一気に加速して転がる可能性があるってこと。リーマン・ショックでどれほどの規模で信用収縮が発生したかを思い出せば、これも誰にでも分かるハズです。

● もっとも、実際にこの規制法案が通るかどうかは何とも言えない状況にあることも確かで、このまま規制実施に突っ走るとは考え難い面があるのは事実。何と言っても、その場合に到来するであろうマーケットの混乱は、現時点での米政権にとっては、全く不必要なものだからです。それでも、上記したように、マーケットは何よりも不透明感を嫌がります。それが微妙なレベルであったとしても信用収縮を巻き起こし、それが昨年からずっと継続している相場の上昇基調を、あっさりと終わらせてしまうことだって有り得るんです。少なくとも、その匂いを感じ取ったからこそ、米国株はこれだけ2日間で下落したのでしょうしね。

● ずーっと昔にマーケットコメントで書いた覚えがあったのですが(検索したらこちらでした(^^;)、元英国首相、マーガレット・サッチャーさんの有名な言葉を贈りたいです。

"The poor will not become rich, even if the rich are made poor."
「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちになりません」

● 本当にその通りだと感じます。決して金持ちや高額ボーナスを礼賛するわけではないとしても、「金持ち批判」だけでは何も解決しない、ってこと。それよりも、金持ちにスッとお金を出させるように制度を整備した方が、お互いに良い思いをしつつ金が廻ると思うんですけど…。なお、私の見方は当然ながら、多少なりとも、金融業界側にバイアスしていると思いますので、その辺はあらかじめご了承を(^^;。

参考ニュース

追記:参考になるサイト・ブログ


● せっかくの祝日ですが、今日は妙に肌寒いこともあって巣ごもり(^^;。そこで、JAL(9205)の件について少し書いておきましょう。ただ、世間一般で出ている「株券紙くず化」等々の話については、日経その他の報道をご覧頂くとして(^^;、ここでは指数絡みの話に集中して行きます。

● まずイベント予定の把握。休み明けの1月12日には、JALのOBに対する「企業年金減額に関する意向確認」の投票期限を迎えます。とは言うものの、色々な報道などを見ていると、現段階ではこの結果がどうあれ、JALが法的整理に入ることは間違いなさそうです。JALの株主にとって、現時点でJAL株を売ったほうが良いかどうかは、まぁ何て言うか、墜落しつつある飛行機の中で旅行者傷害保険の申込み用紙を記入しているようなもので、時、既に遅し。一方で、指数ヲタクにとって気になるのは、JALの上場が維持されるかどうかの点です。

● というワケで本題。ご存知の通り、JALは日経平均採用銘柄です。ところが、JALが破綻となって上場廃止が決まれば、日経平均の「臨時銘柄入替え」が発生することになります。日経平均の銘柄入替え等々のルールは、「日経平均プロフィル」というオフィシャルサイトに詳細に出ていますが、そのなかで今回注目すべきは、「銘柄選定ルール」のところ(2ページあります)。上の方は年1回実施される(例年10月に実施)「定期見直し」に関連する話が中心ですが、今回のJALの場合は、下の方に記載してある「(5)臨時入れ替え」に該当。つまり、「採用銘柄の被合併や経営破たんよる上場廃止が発生した場合」と明記してあるケースに該当する(かもしれない)ってことになります。

● ここでは、JALが法的整理に伴って100%減資を実施し、上場廃止になると想定して書いていきましょう。銘柄入替えについて考察する際に、押さえておくべきポイントがいくつかあります。いずれも、日経平均プロフィルに明記してあることですが、特に以下は重要。

  • 除外は整理ポスト入りと同時に行う
  • 破たん銘柄の整理ポスト入り後、2日間程度の周知期間を置いた上で補充
  • 経営破たんよる上場廃止が発生した場合、「高流動性銘柄群」に含まれる銘柄の中から、当該除外銘柄と同一セクターに属する銘柄のうち、市場流動性順位が高い未採用の銘柄を補充することを原則
  • ただし、細かい例外規定もあり

● このルールから想像すると、JALの上場廃止が決まった時点でJALは整理ポストに割り当てられることになるので、その時点で日経平均から除外されることになります。いまさら後生大事にJAL株を抱えているファンドは多くはないと想像するのですが、それでもピュアな指数連動ファンドからは売りが出るでしょうネ。まぁ、これはそれほど大した話ではありません(空売り出来る訳ではないので)。そして、その日の大引後にでも、日経から新規採用銘柄(補充銘柄)が発表されることになるハズです。そこから2日間程度経過したあとで、めでたく日経平均に採用、という手順になります。これまでの経験からすると、大引後の発表は午後4時半です。もちろん、私がこう書けば日経が気まぐれを起こすかもしれませんが…(^^;。

● 一方、補充銘柄については、JALと同一セクターに属する銘柄ってことになっています。日経のセクター分類定義はこちらの中段付近に明記されていますが、JALは「運輸・公共」セクターに所属。これは、日経36業種に言い換えると「鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス」ってこと。この中で、日経平均に採用されていない銘柄で流動性ランクが上となると、まぁ、ドタ勘で想像したとしても、大体が同じような結果になると思います。敢えて伏字にするほどのことはないと思うので書いちゃいますが、JR東海(東海旅客鉄道、9022)が筆頭候補ですね(^^;。これまでも定期銘柄入替えの際に候補銘柄として何度も名前が出ているので、全くサプライズではないし、「運輸・公共」セクターとしては妥当なチョイスでしょうか。

● JR東海はかなり大きな銘柄なので、(1) JALの上場廃止が決まった、(2) 補充銘柄がJR東海と決まった、と2連発で予想を当てたとしても、どの程度の株価インパクトがあるかは不透明。市場関係者の間では、JALの経営不安が現実味を帯びて囁かれはじめた頃(もうかれこれ半年以上も前の話)から、日経平均の臨時銘柄入替えについては、頭にあったはず。当時は先回りする確信があったのではないにしろ、12月にJALが100円を割り込んで急落した時点では、相当数の市場関係者が意識したと想像します。その時点で、JR東海という名前は、かなりの方々の頭に浮かんでいたでしょうから…(^^;。

● なお、もしJALの減資が100%ではなくて上場維持となれば、現時点での臨時銘柄入替えは発生せず、上記の話は「無かったこと」になります(^^;。現在、話として出ているのは、「施行規則で定める再建計画の開示を行った場合には、当該再建計画を開示した日の翌日から起算して1か月間の時価総額が10億円以上」というのが条件になります。これは東証の有価証券上場規程第601条(7)に明記されています。もし興味のある方は、東証HPにPDFファイルがアップされていますので、ご参照ください(このPDFファイルの39ページ目)。この場合、何%の減資ならこの条件を満たせるかってことが焦点になります。

● ちなみにJALの株価は休み明けに急落(率で言えばの話)すると予想されるのですが、JAL株だけを考えれば、日経平均への直接的な影響は非常に限定的です。JALの金曜日終値は67円ですが、この価格帯での制限値幅は30円。ストップ安するとしても前日比では30円下落するだけ。日経平均は基本が単純平均株価なので、構成銘柄の一つが30円安したとしても、全体からすれば、ホンの微々たるもの。むしろ、ファーストリテイリング(9983)がチョロッと動いた方が、はるかに日経平均に対してはインパクトが大きくなります。

● 総合的に見れば、債権放棄を迫られるメガバンクの株価にも、ある程度のプレッシャーが掛かる可能性があるでしょうから、波及効果としてはJAL単体の下落よりも大きなインパクトになる可能性があります。でも、はっきり言って、JALの経営破綻はサプライズでも何でもありません(^^;。もう何ヶ月も前から分かっていたことだし、現在は手続の最終局面ってこと。それよりも、為替の水準がどうのこうのだとか、米国の株価がどう動いたかの方が、はるかにインパクトがあるでしょうね。

● 最後に蛇足的に少し。この先、日経平均はあと2銘柄の臨時入替えがあることが、ほぼ決まっています。一つは、新日本石油(5001)と新日鉱HD(5016)の経営統合で、これは今年3月末の話。もう一つは、三菱ケミカルHD(4188)による三菱レイヨン(3404)のTOB・完全子会社化に伴うもの。現時点では時期は未確定ながら、春先ってのは違いなさそうです。指数ヲタクにとっては、昨年秋の定期銘柄入替えが無かっただけに、ちょっと心躍る春先になりそうです(^o^)。

● 先週末、11月27日に東証HP内に、『次世代売買システム「arrowhead」専用ページ』 なるものが公開されています。証券会社、特にトレーディングの最前線で戦う方々にとっては、これまでも何かと話題になってきたシステムですが、色々なスペックだけではなく、今回、板状況が動画で公開されており、これは証券会社関係者だけではなく、一般に売り買いする方々は一度は目を通しておくべきかと…。

● とにかくスピードが速いのです。板の状態のシミュレーションが掲載されているのですが、まず、それをご覧頂いた方が話が早いと思います。東証HPに掲載されているものをリンクします。東証HPでは、上記ページ内に『arrowhead稼働後の板の動き(シミュレーション)』として掲載されているもので、実際の板で成行注文が執行されるときの様子です。

■現行システム ---> 板の動き(動画=等速)
■arrowheadシステム ---> 板の動き(動画=約15分の1でスロー再生)
■arrowheadシステム(連続約定気配) ---> 板の動き(動画=約15分の1でスロー再生)

● ご覧頂くと一目瞭然ですが、「約15分の1のスロー再生」でも、肉眼ではまず見えません(^^;。なので、ホンチャンだと、瞬時に板が変化したように見えるのでしょうね。現状と比較すると、ワープってな速度ではありません、ホンマ…(^^;。

● これで何が変わるか?前々から証券関係者の間では予想されていることですが、特に短期筋にとっては、「板を見ながら売買する」というスタイルが通用しなくなってくる可能性が大きいと考えています。証券のディーラー筋などの間では、これまでは、大きな注文が入ったのを見て追随したりの売買が可能(相当に素早く動く必要があったにしろ)だったのでしょうけど、このシミュレーション動画を見るだけでも、arrowheadシステムになったあと、「板を見ながら…」が通用するとは思えないんです。「あっ」って時には、既に約定済みだし、実際に画面で大きな注文が入ったのかどうかを確認することすら困難になりそうです。もちろん、板を覚えていて、「○○円まで入ったのだから、××株の商いが成立したに違いない」は分かるでしょうけど、常にウォッチしている10銘柄ほどの板を、しかも常時変化する板を覚えるなんて、実際に何かに役立つのかどうかも疑問です。

● 一方で、これだけ約定が素早くなるってことは、情報処理に優れているシステムを使っている、主に外資系証券のプロップデスクや、超高速回転系ヘッジファンドにとっては、それだけエッジがつかめることになる可能性があります。ただし、それについていくだけの巨額な設備投資も必要でしょうけどね…。

● いずれにしろ、arrowheadシステムの導入でトレーディングスタイルが変化するのは間違いありません。このシステムは、2010年1月4日(月)に稼働予定です。

● 日本時間で本日早朝、予定通り、MSCI BarraからMSCI関連指数の定期銘柄入替が発表されています。同社のこちらのリリースは、それぞれの指数の銘柄入替えについて述べてあるのですが、具体的な銘柄に追加・削除については、かなり端折ってあります(日本株についての記述は皆無)。毎回そうですが、銘柄入替えに関しては、単なる新規採用や除外だけではなく、FIF(Foreign Inclusion Factor)の変更や指数採用株数などの変更もあるので、情報としてはそれなりの量になります。ただ、これらの情報は「ライセンス情報」で、一般的にタダで配られる類のものではありません。MSCI Barraとライセンス契約をして、決してお安くはない(^^;フィーを支払って、そして初めてアクセスできるものです。

● 実際にマーケットに与えるインパクトを計算しようにも、これらの個別採用銘柄のウェイトだとか、採用株数などの情報がないと、計算できません。しかし、これらはライセンス情報なんです。しかも、到底、個人で契約できるような金額ではないので(グローバル・フルライセンスだったら、ウン千万円とか…(^^;)、ここは既に契約している証券会社などからレポートとして出てくる情報を集めるしかありません…(^^;。実は昔、大証にMSCI Japan先物が上場されていた頃は、そのおかげで個別銘柄リストなどを誰でも簡単にダウンロードできたのですが、現在では不可能になっています。

● まぁ、手っ取り早いところでは、日経NQNで『日写印や千代建などが高い MSCI新規組み入れで』なんてニュースも流れていたので、この辺を見るだけで、少なくとも新規採用と削除銘柄ぐらいは把握できます。日本株では、今回は「新規5銘柄/除外7銘柄」と、心配していたほど除外が多くなかった印象でした。一応、下記に新規・除外の銘柄リストを抜き出しておきます。

新規 エアウォータ(4088)、千代田化工(6366)、シスメックス(6869)、小糸製作所(7276)、日本写真印刷(7915)
除外 DIC(4631)、大阪チタニウム(5726)、オンワードHD(8016)、プロミス(8574)、レオパレス21(8848)、TBS HD(9401)、光通信(9435)

● 各社から出ているレポートを読むと、他にもFIF変更や指数採用株数変更があるものの、予想される売買インパクトで行くと、やはりゼロから増加する新規採用銘柄と、ゼロに落ち込む除外銘柄が大きいのは当然の話です。個人的には中央三井トラストHD(8306)がどうなるか気になっていたのですが、株数はかなり増加するものの、FIFが大きく削られているので、結果的には爆発的というほどのインパクトではなさそうです(売りは売りになりそうだけど…)。個別銘柄ベースでインパクトが大きくなりそうなのは、計算上では、アレとコレとコレでしょうか…。敢えてここに個別銘柄は書きませんが、想像できますよね?!(^^; (^^; (^^;

● 日本市場全体としては、ホンの少しだけですが、資金流入要因になりそうな感じです。"ウェイトが下落して資金流出"とのシナリオも心配していたのですが、トヨタ(7203)と三菱UFJHD(8306)への流入がかなり大きく(両方ともFIF変更)、「この2銘柄のおかげでトータルがプラス」って状態になりそうです。ただし、この2銘柄は流動性もかなりあるので、実際には、個別銘柄としての売買インパクトはかなり限定的だと予想しています。

● 全てのリバランスは、11月30日大引を基準に実施されます。

● 最近は書くのをサボっています(^^;が、あまり長い間音信不通だったら「死んだ」と思われちゃいそうなんで、ちょっとした"業務連絡"を一つ。11月と言えば、MSCI関連の指数の定期銘柄入替え発表があるのですが、先週、その発表予定が出ています。11月分のリバランスに関しては、日本時間で11月12日(木曜日)早朝の予定です(欧州中央時間で11月11日午後11時過ぎ)。

MSCI Barraのリリースはこちらからどうぞ。もちろん英文ですが、簡単なリリース文章です(^^;。

● 既に周知され過ぎるほど周知されているでしょうけど、一応、復習。MSCI関連の指数は四半期毎に見直しされるのですが、5月と11月は比較的大きな見直しとなる一方で、その間の四半期(8月と1月)は微調整となります。これは5月と11月が根本から計算し直しでポートフォリオが見直されるためで、マーケット全体を動かすほどの規模ではなかったとしても、個別銘柄ベースでは新規採用や削除の結果として、それなりのインパクトが発生することも良くある話です。

● 妙にエキサイトする方々が出てくると厄介なので(^^;、ここで個別銘柄の予想は書きません。でも、全体について簡単に予想できることは、日本株が対世界でかなり大きく出遅れていることから、指数採用下限を満たさない中小型株がかなり出てきている可能性がある、ということ。つまり、削除対象になる日本株が結構多くなるリスクが高いと考えられます。もちろん、新規採用される銘柄もそれなりにあるんでしょうけど、それ以上に削除銘柄が多くなる可能性が明らかに高く、これらの中小型株については、それなりの対応策を考えておいた方が良い状況です。

● もっとも、この辺の予想に関しては市場関係者の大部分が既に意識している事柄なので、昔ほどではないにしても、ある程度の先回りポジションを組んでいる向きもあると思います。とは言え、中小型株の一角が"産業廃棄物"状態になって投げ捨てられるリスクがあるのだったら、それを逆手に取るにしろ、何にしろ、心の準備ぐらいはしておいた方が良さそうです…(^^;。

● MSCI Barraからの発表は前述したように日本時間で11月12日(木曜日)早朝。翌13日がオプションSQ。リバランスそのものは11月末に実施です。

● 亀井静香金融・郵政問題担当大臣という選択肢は、新政権にとって、さらにマーケットにとって、何かと火種になるのではないかと懸念は持っていたのですが、やっぱりというか何と言うか…。いったい、この人は自分の立場というか、少なくとも出身母体の政党議席数をわきまえて発言しているのかどうか、大いに疑問に思ってしまいます。多分、同じように感じている人が多いんでしょうし、常識ある人々は今回のモラトリアム法案などがマトモに受け止められるとは考えていないでしょうけど、それでも不透明感は相場にとってマイナス材料。NT倍率の推移を見ても、このところの動きはかなり酷い状態です。

● あちこちのニュースから抜き出してきても、こんな感じ…。もちろん、全てのメディアが公正中立だとは考えていないとしても、それにしても…って感じは避けられません。

● ぶっちゃけた話、こういう"ニュース"は、スポーツ新聞などを読むほうがはっきりと書いてあるので分かり易いです(^^;。いずれにしろ、ある程度の経済サポート制度は考えられるにしても、それは約1年前だったら同意が得られただろうけど、「今になってなんで?」って感じは避けられません。もちろん、もう一度、経済全体としてダブルディップに陥るリスクがあるのは事実だとしても、それでも「なんで今?」ってのは避けられません。まぁ、もともと「日経平均先物廃止」なんてことを提言した人だから、過去をある程度知っている向きにとっては、「またか…」なんでしょう。全銀協会長のコメントも、そんな感じがありましたしネ。しかし、自らがどういう立場で大臣になっているのか、もう少し認識された方が良い様な印象は避けられませんでした。

NT Ratio ● まぁ、政治の話をするのがこの場所の本題ではないので、この辺にしておいて、もう少し相場関連の話。今回の亀井発言に加えてJALの経営問題を受けて、金融株が全般に売り込まれた結果、NT倍率で見て分かるように、かなり歪な状態になりつつあります。これをNT倍率という言い方ではなく、物色として見ると、「日経平均採用値嵩株買い・時価総額大銘柄売り」となり、もっと端折ってしまえば、テクノロジーや輸出系(とファーストリテイリング)を買いで、銀行株を中心とする金融株売りって構図になるのです。

● 問題は誰がそうやっているのかということ。NT倍率などを意識せずに、単に業績回復度合いとか、中国経済がどうのこうので銘柄選択をして、結果的にそういう格好になったという面は大きいと考えています。その一方で、NT倍率をモロに意識して、ロング・ショートをかましてきているヘッジファンドの影も十分以上に感じるようになってきたのも事実。ヘッジファンドは、いずれどこかでアンワインド(ポジションの解消)をやってきます。それがジワジワだったらNT倍率もジワジワと低下するようになるでしょうし、何らかのきっかけで急激に発生すれば、NT倍率も急激に下落するシナリオも想像できてしまいます。

● とは言うものの、「何がどうなればそうなる」というのははっきり見えてこないのが現状。だからこそ、NT倍率はこんな格好でジワジワと上昇過程をたどっているのですが、その裏で、逆側に動くリスクもそれなりに意識しておきたいです。足元の状況を見る限りでは、銀行株急騰のシナリオはちょっと考えにくいので、日経平均採用値嵩株系が下がるってコト?ならば、相場全体も影響は避けられないだろうし…。頭を柔らかくして考えておきたいところです。

● 蛇足。過去といえば、亀井静香氏は、かつて、かの許永中を「盟友」と呼んだとかどうとか…。Googleなどで「亀井静香 許永中 盟友」とググってみると、かなりおどろおどろしい世界が出てきてびっくりすると思いますヨ。いずれにしろ、せっかく鳩山総理の外交デビューがソコソコの好印象で来たんですから、これ以上、妙な方向に進まないことを祈るのみです。少なくとも、政治の世界がマーケットに悪影響を与え過ぎないことを願っています。まぁ、避けられないことなのは分かっていますけど…(^^;。

● 毎年恒例の日経平均定期銘柄入替えの時期がやってきました。基本的に9月第1週後半から第2週に掛けて発表されることが多く、過去の例からは、9月メジャーSQ日の前に発表されています。

● ただ、今年は「もしかしたら銘柄入替えがゼロかもしれない」という下馬評も結構根強いので、もし本当に入替えがゼロだった場合、その旨の発表そのものがあるのかどうかは不明です。かの「伝説の30銘柄入替え」(2000年)以来、定期銘柄入替えで銘柄が入れ替わらなかったことはありません。もし定期入替えがゼロだったら、現行制度になってから初めて、ってことになります。

● 過去の日経平均銘柄入替え関連のニュースは、日経平均プロフィルというサイトのニュースページ(http://www.nikkei.co.jp/nkave/news/index.html)に全て掲載されています。ご参考までに、過去の日経平均銘柄入替え発表日は以下表の通りです。全てこの日の大引後、大体は午後4時半頃に発表されています。そのためSQ日までの営業日は、翌日からの計算としてあります。為念。

日経平均・定期銘柄入替え
発表日曜日対SQ日
2008年9月8日第2月曜日4営業日前
2007年9月7日第1金曜日5営業日前
2006年9月5日第1火曜日3営業日前
2005年9月5日第1月曜日4営業日前
2004年9月7日第1火曜日3営業日前
2003年9月9日第2火曜日3営業日前
2002年9月5日第1木曜日6営業日前
2001年9月11日第2火曜日3営業日前
2000年9月8日第2金曜日SQ日当日

● ちなみに、今年の9月SQは9月11日(金)です。そうそう、ストリートでの下馬評ですか?まぁ、ここに銘柄名を明記してしまうと、妙にエキサイトする方々が出てくるリスクがあるので、いつも通り、個別名は無しにしておきます(^^;。

● 本日(5月29日)大引けでMSCIのリバランスがありました。一応復習しておくと、5月13日(日本時間で5月14日)に MSCI Barra から発表されていたリバランス 「MSCI EQUITY INDICES MAY 2009 SEMI-ANNUAL INDEX REVIEW」 に伴うもので、MSCIスタンダード指数に関しては、日本株で新規採用が3銘柄、除外が4銘柄(下記参照)。他に一般には公表されないベースながら、FIF変更が100銘柄強、採用株数の変更が30銘柄弱あったものの、全体としてはそれほど巨大規模ではなかった印象でした。

新規 日本マクドナルドHD(2702)、リンナイ(5947)、GSユアサ(6674)
除外 長谷工コーポ(1808)、NECエレクトロニクス(6723)、アルプス(6770)、武富士(8564)

● 新規採用銘柄の代表選手としてGSユアサと日本マクドナルドHDの日中足を付けておきます(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。GSユアサは最後のワンティックはかろうじて上向きだったものの、日本マクドナルドは先回りが多過ぎた格好で完璧な大逆噴射状態(^^;。まぁ、先回りが入ってくることそのものが、市場心理の好転を表現していると受け止めることにしましょう(^^;。

GSユアサ(6674)日中足
日本マクドナルドHD(2702)日中足

● 一方、削除銘柄にはそれほど目立ったというか大きな動きはありませんでした。ただ、FIF変更や株数変更に伴うウェイト変更のおかげで、かなりサイズのある売りが出ると予想されていた三菱UFJ FG(8306)は、それなりに最後は売られていました。今回のMSCIリバランスでは、GSユアサは流入金額としては最も大きかったものの、パナソニック(6752)などにもソコソコサイズの買いが入ることは予想されていました。で、実際に日中足を見ると、こちらの方がきれいにその感じが出ていた印象です。新規採用銘柄と削除銘柄は比較的周知される一方で、FIF変更や株数変更に伴うウェイト変更に関しては、MSCIのライセンス情報がないと手も足も出ないし、さらにある程度のマーケットデータを扱えないとウェイト変化とインパクトの計算も出来ません。その結果として、インパクトがより素直に出ているのかもしれません。

● 今後の参考と記録のために、三菱UFJ FG(金額流出)とパナソニック(金額流入)の日中足も付けておきます(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。

三菱UFJ FG(8306)-(金額流出) 日中足
パナソニック(6752)-(金額流入) 日中足

● また、全体としては日本株からは200億円程度の資金流出が予想されていたものの、実際にはTOPIXも日経平均は高値引け(^^;。投信募集が好調だったことで設定買いが入った可能性が高いのですが、加えて、最近はリスクマネーが戻ってきつつあるのか、再び「理論通り」には動きにくいマーケットになって来たのかもしれません。心理合戦ですね、本当に…。

● 本日16時時点の東証の「空売りの残高に関する情報」(http://www.tse.or.jp/market/juran/karauri/index.html)において、TCI (The Children's Investment Fund Management (UK) LLP)が東芝を大量に買い戻していたことが開示されています。東証HP内、 http://www.tse.or.jp/market/juran/karauri/090518-1.zip のファイルのなかに"20090514_TCIF-1.pdf"とのPDFファイルがありますが、これが該当の開示文書です。

● ファイルをご覧になって頂ければ分かりますが、今回の開示で、5月14日(木)報告文でTCIの東芝の空売り残高は696万7000株。TCIのファンドの規模を考えれば、数量の推移だけを見れば、東芝の買戻しはほぼ終わったってことになるのかもしれません。

● 過去の開示を遡って調べて見ると、5月14日の前は4月10日に報告があり、この時点で東芝の空売り残高は1億3679万7000株。その前は、3月10日報告があり、ここでは1億3529万7000万株と、あまり大きな変化はありません。つまり、今回の報告にあった変化が足元では最大級だったのです。「残高割合の計算年月日」が2009年5月14日となっているので、5月14日の1日で1億3000万株ほども買ったのではないにしろ、この辺で大きな動きが出たのは間違いなさそうです。

● 久しぶりのマーケットコメントっぽいネタですので東芝(6502)の日足チャート(出典:マネックス証券)直近3か月分を付けておきます。

東芝(6502)日足(3ヶ月)

● 関連して参考サイトも一つご紹介。「空売りさんいらっしゃい♪」というサイトで東芝特集はこちらです。東証の開示はつい先ほどだったので、まだ更新されていませんが、今晩とかには更新されると思います(^^;。

● 番組宣伝ってことではないのですが(^^;、明日(4月23日)夜10時から、テレビ東京の『経済ドキュメンタリードラマ「ルビコンの決断」』で「リーマン破たん 最後の50時間」という番組が放映される予定です。テレビ東京の番組予告ページでは、

2008年9月15日、アメリカの大手証券会社のリーマン・ブラザーズが経営破たん。このとき、六本木ヒルズの29階から32階にオフィスを構える「日本法人」の社員たちは、会社の状況について一切伝えられていなかったという。
「まさか破たんするなんて・・・」
さかのぼることおよそ50時間前、ポールソン財務長官らとゴールドマン・サックスなどの証券会社のCEOたちがリーマン・ブラザーズの処理を巡って話し合いを続けていた。リーマンが破たんするまでの間に一体何があったのか?ウォール街のボスたちのうごめく思惑と、知られざる50時間の攻防を明らかしていく。
そして当時リーマン・ブラザースの日本法人に勤めていた社員たちはその時、何を感じ、どう行動したのか?番組では元リーマンの社員たちを徹底的に追跡取材。その証言や様々な資料をもとにして構成し、ドキュメンタリードラマとして描いていく。また、なぜ、リーマンの破たんが世界経済にここまで影響を与えたのかなども検証していく。

とのこと。同じ業界、しかも同じ外資系証券に勤める人間として(今は勤めてないけど…(^^;)、全く他人事とは思えない出来事。また国内証券の方々にしても、どうしても山一證券と重ね合わせてしまう向きは少なくないと思います。

● 実際、この番組を見るのは初めてなので、その「ドラマ化」がどの程度リアルなのかは分かりませんが、一応、明日晩は少しだけ期待しておきます。


追記

● うぅ~ん、危惧していたように、あまり大したことはなかった(^^;。ファルド君なら、あんな小部屋ではなく、もっと大きなお部屋にお住みだったろうし…。まぁ、事実をドキュメンタリー仕立てにしたと言う程度でしょうか…。実際にリーマンの日本法人に勤務されていた方々を何人も知っていますが、ちょっと違和感を感じたでしょうね。残念ながら…。

● 残念な話がまた一つ。「ヘッジファンド・クルーク」が3月末でニュース配信を終了し、サイトが閉鎖されるとのお知らせが出ています。

● もちろん、ヘッジファンド関連のニュースは世界中に溢れているし、今後もそれを追跡するのは十分以上に可能なんですが、日本語でのニュースはかなり限定的だったのも事実。このサイトでは、専門的なニュースを日本語で提供していたし(数日遅れにはなるけど)、RSSもあったのでそれなりに重宝していたんです。

● ヘッジファンド業界は一昨年、2007年夏場のバリュー崩落の頃からおかしくなり、昨年のリーマンショックで過去最大級の変化を強いられた格好になったのですが、その影響がこんなところにも出てきた格好。まぁ、昨今の経済状況を勘案すると致し方ない面もあるにしろ、どこかが引き継いでくれるとありがたいともちょっと感じてしまいます(^^;。これも、今回の"金融危機"の一つの側面ではあるのですが…。

● オフィシャルなお知らせは、ヘッジファンド・クルークの中のこちらのリリースに出ています。

 TOPIX : 812.08 (+26.06, +3.32%)    日経平均 : 8329.05 (+411.54, +5.20%)    円ドル : 92.90  

● 堅調な相場展開を予想してはいたものの、後場寄付きからピョコンと跳び上がったのは、ややサプライズ。理屈付けとしては、前週末の米国株式が悲惨な経済指標や先行き不透明感にも関わらず堅調だったこと、アジア各国市場が軒並み大幅高だったこと、さらに意外感のある上昇が先物を中心にショートカバーを誘発した、ってところ。ただ、それ以外には特に目新しい材料はなく、薄商いの中での株高だっただけかも知れません。上昇日には毎回書いている気もするんですが(^^;、継続できるかどうか、英語でいう「Sustainability」が感じられるかどうかがカギです。さらに明日、フォロースルーが感じられるような展開だと、もう言うことはありません(^o^)。

● 時間順に行きましょう。前場は堅調な推移だったものの、全体としては見送り気分が強く閑散。前引け段階での東証1部売買代金はわずか5099億円に留まり(出来高は6億9822万株)、年初来最低水準での推移でした。ところが、後場SQ値は前場終値に対して101.86円もブッ飛ぶ大きな「昼休みギャップ」が発生。後場はこれでピョコンと高寄りして、そのまま高値圏で揉み合いながらの大引けでした。日中足をご覧頂くと一目瞭然ですが、後場寄付きでピョコンと上に跳ねてから、そこから下がりはしなかったものの、上にも大きく行かなかったこと。つまり、後場寄りで何らかの買いが相場を押し上げたものの、残念ながら、そこからのフォロースルーを力強く感じることは出来ませんでした。日経平均の日中値幅は399.26円と、ほぼ400円。しかし、前場は162.98円、後場は130.23円と、それぞれの半場は比較的小動きだったのです。前場も10時半頃までは「膠着」でしたし、その意味では、不思議な1日でした…。

● 日経平均の日中足を付けておきます(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。

● 今日もLarge70とMid400のパフォーマンスがかなり良く、Large70は49bps勝ち、Mid400は32bps勝ち。Core30は47bps負け、Smallは64bps負けでした。この傾向は先週金曜日と似ています。また、日経平均の上昇率がTOPIXを大きく上回ったのも、金曜日と類似。ただ、金曜日よりもはるかに今日のほうが「日経平均フレンドリー」な1日でした。何が起こっているのかは、追々見えてくるとは思いますが…。

● 記録。東証1部出来高は前週末比3552万株減の18億6386万株、売買代金は同305億円減の1兆3779億円。東証1部値上がりは1443銘柄、値下がりは215銘柄。今朝の日経平均SQ値を計算すると、前週末比77.36円高の7994.87円(9時32分確定)。また、市場筋推計による今朝の外資系証券寄付前売買動向は、売り越し継続(1830万株売り/1190万株買い)。ガタッとフローが減少して閑散でした。

● 話題変更。今週はビッグSQ週。そろそろロールオーバーの時期になりました。Bloombergで何もいじらずにフェアスプレッドを計算させると、TOPIX先物が-0.38pt、日経平均先物が-11.44円。ところが、限月間スプレッド市場では、TOPIXが+0.5pt買い/+0.6ptヤリ、日経平均が+10円買い/+15円ヤリ(ミニ日経は+10円買い/+11円ヤリ)で終わっており、一見するとかなりのプレミアムに見えます。ただ、上記のBloombergのデフォルトで計算させると、短期金利(リスクフリー)が当限も翌限も0.47%になっています。年越しのレートが1週間のレートと同じってのは、正直言って、現在の金融情勢を考慮すると、ちょっと非現実的に感じてしまうところ。

● そこで、当限は0.47%そのままで、翌限(3月限)をファンディング・レートに近いと思われる0.90%にすると、TOPIX先物のフェアスプレッドは+0.56pt、日経平均で-1.83円になるのです。過去の経験則から、TOPIX先物にはあまりプレミアムが付かない一方で、日経平均先物では10円程度のプレミアムが付くことが多いのを考慮すると、実際にマーケットで付いているスプレッドの値段も、ほぼ妥当な水準かなと…。裁定残高の推移やヘッジファンドの動向などを考慮し、さらに機関投資家の間では、株券電子化に伴って、現物よりも先物でロングポジションを取りたい意向が多少あることを考えると、今回はロングロールの方がプレッシャーが強そうにも感じてしまいます。もっとも、普通に考えたとおりに動かないのも相場なんですけど…(^^;。

 TOPIX : 786.02 (-2.86, -0.36%)    日経平均 : 7917.51 (-6.73, -0.08%)    円ドル : 92.30  

● 少しマイナスかと予想していたら、意外に堅調なスタート。ただ、米ビッグスリーの件や雇用統計などの先行き不透明感は避けられず、上にも下にも大きくは動かない地合いでした。まぁ、これは十分以上に予想できた展開だったので、サプライズでは無かったですけど…(^^;。ただ、指数は比較的小動きだったものの、個別には急上昇している銘柄と急降下している銘柄があちこちにあり、それなりに忙しそうな1日でした。

● 初っ端のプラスについて、市場関係者の間では「???」。買い主体が分からない時は「公的資金の買い」説が有力になります(^^;。まぁ、本当にそうだったかは永遠に分からないし、「公的資金」説が流れる時は、それだけ姿が見えなかったってことです(^^;。今日の相場で特徴的だったのは、Large70が妙に強かったこと。Core30が23bps負け、Mid400が37bps負けだったのに対して、Large70は63bpsも勝っていたのです。Smallも43bps勝ちだったものの、これは時価総額的には小さいところなので影響は小さいものの、Large70のパフォーマンスは、ちょっと不自然な感じもありました。何かその辺の銘柄群に買いが入っていた可能性は考えられます。

● 個別では、一見するとディフェンシブ系がしっかりだったようには見えるものの、電力・ガスや医薬品は、さすがに利食い売りに押された格好でマイナス。一方で、小売りやテレコムは堅調と、方向性が今一つまとめ難い1日でした。まぁ、銀行株が安かったのは、五・十日の週末となれば仕方ありません(^^;。詳細は、色々なマーケットレポートをお読み頂ければと…(とサボる(^^; )。

● 記録。東証1部出来高は前日比1億2641万株減の18億9938万株、売買代金は同959億円減の1兆4084億円。東証1部値上がりは731銘柄、値下がりは874銘柄。今朝の日経平均SQ値を計算すると、前日比75.49円高の7999.73円(9時20分確定)。日経平均の日中値幅はたったの115.68円(前場86.47円、後場106.82円)でした。また、市場筋推計による今朝の外資系証券寄付前売買動向は、かなりの売り越し(2570万株売り/1540万株買い)。なお、今日から集計が1社減って11社になりました。

● 日経平均の日中足を付けておきます(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。

● 話題変更。このところのヘッジファンド関連のニュースフローを見ると、「解約停止」や「償還停止」が異常なほど目立ちます。 「米ヘッジファンドのフォートレスが償還停止、年内の償還請求増加で」 (ロイター)や 「チューダー・インベストメント、BVIファンドの償還を一時停止」 (ロイター)などは最近の典型例。ヘッジファンド側の言い分としては、一部の顧客による大型解約・償還によってファンドが不必要に痛むのを防ぎ、残存顧客の利益を守るため、というのが良く使われます。もちろん、ファンドそのものの存在を継続することで、生き残りを図っている面も強くあるのですが…。ちょっと前までは、解約・償還停止なんてのは"破綻一歩手前"と受け止められ、一気に信用を失う禁じ手だったのです。ところが、昨年8月以降、昨今の状況では、残念ながら珍しくも何ともなくなってしまいました。

● マーケット側から見れば、解約・償還停止により、突然のポジション解消に伴う大量の投げ売りや強烈な買戻しが出にくくなり、市場の混乱を抑制する効果があると考えることが出来ます。ただ一方で、投資家側からすると現金化するつもりだったポジションが、強制的な「塩漬け」状態になってしまうワケで、現金が必要だったりリスクを減らす必要があれば、解約・償還停止になっていないファンドを予定外に現金化する羽目に陥り、結局のところは、廻り回ってマーケットに影響を与える結果になります。

● 厄介なのは、往々にして解約・償還停止になるファンドは、運用成績が悪化したことが原因の場合が圧倒的に多いってこと。結果的に運用成績が悪ければ悪いほど、解約・償還停止になってシコる、という投資家としては避けたいパターンに陥ってしまうのです。その分のリスク量を他で落とすことになったり、ヘッジファンド保有リスクを他のデリバティブを使ってヘッジしたり(最近はそういう商品が流行だったりします(^^;)と、余計な手間隙が掛かります。ヘッジしたリスクは、組成した業者がマーケットでヘッジするしかなく、結局、マーケットにインパクトが出て来ることになってしまうのです。

● 解約・償還停止は、基本的にも根本的にも問題の先送り。多くのヘッジファンドは既にレバレッジを落としてしまっているので、かつてのように数百%(もしくはそれ以上)のレバレッジを掛けていた時点で被った損失を、低レバレッジの状態でコツコツ取り返すのは、全てがうまく行ったとしても、かなりの時間が掛かってしまうのは誰が考えてもすぐに分かります。そのため、これらの問題の「解決」には、相当な時間が必要になるのは明らか。後ろ向き処理を時間を掛けてやるというのは、ある意味で、不良債権処理と同じようなもんです。相場に神風が吹くのを待つ、というのも似た状況でしょうし、そんな時には神風が吹くことは無い、というのも多分、「真」なんでしょう。何度も同じことをヤルってのも、情けない気もしますが…(^^;。

● 雑談。 「ホンダ来季F1撤退へ!経費負担が経営圧迫」 (サンケイスポーツ)などと、あちこちのメディアで報道されています。色々な経済状況を勘案すると致し方ないところでしょうけど、やはり寂しく感じるのは避けられません。電気自動車だけの世界的なレースツアーでもあれば、メーカーも資金を投じて参加する大義名分が出来るだろうのに…。既に電気自動車で時速300キロ超も出る車は存在します(Wikipedia、エリーカ)。結構、興味深いレースになると思います。ただ、妙に静かで盛り上がらないレースになるかもしれないけど(^^;。

● 寒くなりそうな週末です。お身体にはくれぐれもお気をつけ下さい。来週はビッグSQです(^^;。良い週末を!

 TOPIX : 788.88 (-10.31, -1.29%)    日経平均 : 7924.24 (-79.86, -1.00%)    円ドル : 93.05  

● 初っ端は米株高(NYダウは+172.60ドル/+2.05%、S&P500は+21.93pt/+2.58%)やCME日経平均先物高(大証比135円高)を受けて堅調にスタートしたものの、TOPIXは9時45分頃にマイナス転落、日経平均も10時過ぎにはマイナス。ただ、これもかなり予想できた風景で、残念ながらサプライズではなし。今晩、明日晩と米ビッグスリーの将来を左右する米議会公聴会が予定されているなか、日本時間の昼休みに「GMとクライスラーが"事前合意"型の破産法申請を検討中」と伝えられ、先行き不透明感は強まるばかり。後場はずっと水面下での動きでした。ただ、大きく売られる感じではなく、売り買いともに基本的には見送られた格好でした。なお、上記ニュースはBloombergの英語ニュースで流れたのが一番最初だったと思うのですが、Bloombergの日本語ニュースでは、 『GMとクライスラーが政府救済得るため「事前合意の破産法」検討』 です。

● 日経平均の日中足を付けておきます(出典:Yahoo! JAPAN Finance)。

● 米ビッグスリーの状況に関しては、日本であれこれ言っても仕方ないし、日本の市場は完璧に受動的立場。企業再生という観点「だけ」で考えれば、債務カット、労働組合とのレガシーコストのカットなどを考えると、一度、破産させてきれいな身体になった方が良いのは、多くが合意するところだと思います。ただ、社会的、政治的なコスト、そしてこれだけ脆くなっている金融市場全体へのインパクトを考えると、なかなか企業再生という限定的な部分における経済的合理性だけで前に進むワケにも行きません。

● 当然、マーケットもその辺は十分承知で、今日のザラ場では、GLOBEXの米株価指数先物を見ながらやるしかなかった状態で、その先物は朝からジリ貧。これじゃあ、寄付き段階のプラスが保てなかったのも仕方ありません。業種別に見ても、売られたのはテクノロジー、自動車、銀行、商社ってところで、逆にプラスだったのが医薬品、電力・ガス、小売りの一角、そして再編絡みで鉱業/石油。最後の鉱業/石油はともかくとして、ディフェンシブなところだけがプラスというのも、今日の地合いを良く表していました。

● 今日に限らず、12月に入る少し前からの相場では、買い材料の乏しさ、買い手不足感が否定できず、相場押し上げ要因が見付かり難い状況が継続しています。値段関係なしで投げ売りする向き(主に解約売り)がかなり減ったのは事実で、暴力的な押し下げ圧力は遠のいています。ただ、だからと言って相場が下がらないってことではなく、今日のように上値を買う向きの乏しさから、ジリ貧が見慣れた風景になりつつあるんです。さらに、ヘッジファンドを中心とする海外投資家が市場から抜けてしまった分だけ、市場全体の取引が減っているのが現実で、マズイ雰囲気は日増しに強まっているのが実情です。まぁ、止血措置がようやく山場を越えつつあるとしても、治療はこれから先。治癒はさらにもっと先の話なのは、冷静に考えてみれば分かることで、まだ時間が必要なんでしょうね。

● 記録。東証1部出来高は前日比3億1025万株増の20億2579万株、売買代金は同1920億円増の1兆5043億円。後場寄付きでバスケット系の取引があったことが影響して増えています。東証1部値上がりは642銘柄、値下がりは937銘柄。今朝の日経平均SQ値を計算すると、前日比60.08円高の8064.18円(10時22分確定)。スカパーJSATが最後まで寄付かなかったものの、それ以外は全て9時20分までに寄っています。そして、その辺が今日の高値でした(TOPIXも日経平均も9時17分に今日の高値を記録)。日経平均の日中値幅は257.85円(前場114.63円、後場170.84円)で、市場筋推計による今朝の外資系証券寄付前売買動向は、かなり大幅な売り越し(3310万株売り/1460万株買い)でした。